デジタルドローイング Anonymous series(作者不詳シリーズ)
「風は知っているのに。(The wind knows.)」
オリジナルプリント画面サイズ 231x170mm (紙サイズA4)
画材:鉛筆 画用紙
ソフトウェア:アドビ フォトショップ
この作品は、作者不詳で題名も不明の設定で製作されました。従って、これから何を読み取るかは自由です。それで、ひとつの例として下記の英詩から題名を付けてみました。
“Why do I love” You, Sir?
Because-
The Wind does not require the Grass
To answer – Wherefore when He pass
She cannot keep Her place.
Because He knows – and
Do not You –
And We know not –
Enough for Us
The Wisdom it be so –
(エミリー・ディキンソン フランクリン版459より)
架空の画家が描いた「Anonymous series(作者不詳シリーズ)」について
まるで古びた蔵書の中から発見された一枚の素描のようです。黄ばんだ紙は、時の流れを感じさせ、見る者の心を静かに揺さぶります。繊細な陰影は、かつてこの絵筆を握っていた架空の画家の息遣いまでを伝えています。これはどのようにして作られたのか、そして、その発端は何なのか、紹介いたします。
製作方法について
この作品は、大きく分けて二つの段階を経て作られました。まず、鉛筆で画用紙に素描を描きます。この素描は西欧ルネサンスのデッサンをイメージして描かれます。そのイメージの多くは女神や天使を描くための習作(例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチやボッティチェリの素描)です。それをフラットベッドスキャナにて複写しデジタルデータにします。
次に、そのデジタルデータを画像処理ソフトウェア アドビ社のフォトショップにて加工します。出来た画像を元に、ネット公開に適したものとプリントアウトに適したもの二つを作ります。
ですから、皆さんがスマートフォンやパソコンの画面で見ている画像は現実の絵の複製ではありません。それは、デジタルデータとしてある作品そのものになります。また、プリントアウトしたものは、複製画ではなくオリジナルプリントの作品となります。
シリーズの企画について
この企画は、習作として描かれているデッサンを、現代のドローイング作品とすることが出来ないだろうか、と考えたところから始まっています。また、もうひとつの発端としては、油彩画の忠実な複写が難しく、ネットで油彩作品を紹介する限界を感じていたことです。このことから、現実の完成した作品をどうしたらそのままデジタルデータに出来るかと考えるのではなく、デジタルデータとしての作品を如何にして作るかに考えを変えたのです。要するに、出来上がったアナログ作品を無理やりデジタルデータにするのではなく、逆に、デジタルデータの作品を作る発端としてアナログのデッサンを画用紙に描くのです。
そしてこの企画が完成しました、古い時代の架空の画家が描いた古色を帯び黄ばんだ素描を、アナログのデッサンをデジタル処理して作るのです。年を経て痛んだ紙は、素朴なデッサンに物語を与えます。いったい誰が描いたのか、誰を、何を描いたのか、見る者の想像力を刺激します。ですから、作品の題名は、制作意図から来るのではなく、完成したものからの連想です。それ故、題名はひとつの提案に過ぎず、見た人によって様々なものがあり得ます。