2024-10-28

鉛筆デッサンからの変革とデジタルの可能性「古びた紙に刻まれた、どこか懐かしい横顔」

古びた紙に刻まれた、どこか懐かしい横顔
Nobody_#13_ver1

これまで、人物デッサンを単なる練習として捉えていた私が、それを新たな表現へと昇華させる試みを重ねてきました。

ベラスケスや印象派へのオマージュから

最初の試みは、鉛筆で描きながらも、ベラスケスや印象派の油絵のような曖昧で朦朧とした表現を取り入れることでした。細部を描き込みすぎず、遠景を見た時のようなぼやけた質感を出したいと考えました。しかし、それは結局、鉛筆で描いた肖像画の域を出ることはなく、新たな作品として成立させるには至りませんでした。

nobody」という概念の導入

そこで、モデルの肖像画にとらわれず、誰かに似ているようで誰でもない、架空の人物を描くというコンセプトのもと、「nobody」シリーズを制作しました。これは、どこかにいそうだが、特定の誰でもない、普遍的な人間の姿を表現しようとする試みです。

デジタル処理による変革

さらに、デジタル技術の可能性に着目しました。ネット上で公開される画像データは、元のアナログ作品とは異なる新たな作品として捉えることができるのではないかという考えです。

そこで、鉛筆で描いたデッサンをスキャンし、フォトショップなどの画像編集ソフトを用いて、セピア色のコンテで描いたような質感に加工しました。デジタル処理だからこそ実現できる、極細の線や、重ね描きによる豊かな表現も加え、あたかも古い時代の痛んだ紙に描かれたような、アンティークな雰囲気を出しました。

デジタルドローイングの新たな可能性

この作品を通じて、デジタル技術は単なる複製手段ではなく、新たな表現を生み出す強力なツールであることを実感しました。元のアナログ作品とは異なる、デジタルならではの質感や表現が加わることで、作品はより深い意味合いを帯び、見る人に新たな発見をもたらすはずです。

作品に込めた想い

この作品の柔らかな鉛筆のタッチで描かれた女性の横顔は、どこか物憂げな表情を浮かべています。古びた紙に描かれたような質感は、まるで昔の写真を見ているような懐かしさを覚えます。また、これには「遠い昔、何処かいた無名画家が、誰とも分からない人物を描いた」というフィクションが込められています。それは、時代を超えて普遍的な人間の姿を描きたいという私の願いの表れでもあります。

読者へのメッセージ

この作品が、絵を描く人や、デッサンに興味のある方々に、新たな表現の可能性を感じていただければ幸いです。デジタル技術を駆使することで、アナログな表現との融合や、新たな表現手法の開拓が可能です。ぜひ、あなたも自分だけの表現を探求してみてください。

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